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大阪日日新聞「澪標」コラム 無縁社会に対するアンチテーゼ

2010 年 6 月 8 日

大阪日日新聞の「澪標」のコラムです。

6月6日。「大阪あそ歩’10春」(http://www.osaka-asobo.jp/)が、ついに終了しました。最終的な集計はまだ出ていませんが、5月中旬時点で、すでに予約率百パーセントを超える参加申し込みを記録したそうで、中には、あまりにも予約申し込みが殺到したので、特別増便したコースなどもありました。想像以上の大盛況、大成功でフィナーレを迎えることができました。

 また今春は天候不順で、何十年ぶりの大寒気や記録的な大雨にも襲われましたが、そんな中でも大阪あそ歩ガイドさん、サポーターさんからは「今日はやめよう」といった弱音は一切、聞きませんでした。あそ歩ガイドさん、サポーターさんの、自分たちのまちを案内することへの情熱に、頭が下がる日々でもありました。本当に感謝の念でいっぱいです。ありがとうございました。

 さて、5月もほぼ毎日、まち歩きの現場に出ていましたが、いろんな参加者の声も聞きました。とくに印象的だったのが、大阪あそ歩に何度もご参加いただいたという旭区の女性です。子育てが終わって、夫が亡くなってから、あまり外に出ることがなくなって、しかし大阪あそ歩を知ってからは週1回は参加しているとのこと。「1人で参加して不安だったけど、お友達もできたし、大阪あそ歩は生きがいみたいなものです。秋も楽しみにしてます」とおしゃっていただいて、とてもうれしい言葉でした。

 大阪あそ歩は、お一人さまでのご参加が非常に多いのですが、何度か大阪あそ歩に参加していると、自然と顔見知りが増えていきます。「このあいだ佃・大和田のまち歩きでご一緒でしたね?」というようなことから会話が弾み、また偶然、帰り道が一緒だったり、話をしているうちに(なにせ狭い大阪のことですから)共通の知人がいることに気づいたりして、どんどんと仲間や友人たちができていくようです。大阪あそ歩の参加者同士で、緩やかなコミュニティー(共同体)が形成されつつある。これも大阪あそ歩の素晴らしい効用といえます。

 少し話を飛躍しますと、現代社会は核家族化や終身雇用の崩壊、東京一極集中化などによって、「血縁」「社縁」「地縁」が急速に瓦解しつつあります。「無縁社会」というような恐ろしい言葉がありますが、人が人とつながることがなくなって、人間が人間でなくなっていってます。他人のことなど関係ない。自分さえよければいいと欲望を肥大化させて、無責任な世の中になっている。

 大阪あそ歩は、こうした無縁社会に対するアンチテーゼです。大阪あそ歩は、まちを舞台にして、そのまちの物語や歴史、ドラマを、みんなで「すごい」「おもしろい」と言い合いながら、「共有体感」(これが非常に大切なことです!)して、人間同士のつながりを作っていきますから。要するに大阪あそ歩は「好縁社会」(同好の仲間による共同体)を構築します。

 大阪あそ歩によってガイドさん、サポーターさん、参加者の皆さんがお友達になって、新しいコミュニティー・ネットワークができていく。このネットワークの輪がどんどんと広がれば、近い将来、大阪のまちづくりの原動力、新しいセーフティーネットになりえると、ぼくは固く信じています。


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