野花散人『太閣と曽呂利』 立川文庫傑作選 (角川ソフィア文庫)



古本屋で入手しました。角川ソフィア文庫が「立川文庫傑作選」として野花散人の『太閣と曽呂利』を復刻したものです。角川ソフィア文庫は、ほんとええ仕事してくれますねえ。嬉しい。

立川文庫は大阪は心斎橋の出版会社・立川文明堂が出した文庫本です。当初は上方講談を活字にしただけのものですが、大正時代には一大ブームを巻き起こしました。その第一弾は『諸国漫遊一休禅師』。第二弾は『水戸黄門』。じつは一休さんも水戸黄門も、いま現在、世間にこれだけ名が浸透して広まっているのは、立川文庫の大ヒットのおかげです。

面白いのが、上方講談で登場する一休さんは朝廷や寺院に反逆して、黄門さまは幕府のやりすぎを懲らしめて成敗する存在だったこと。いかにも大阪生まれのアンチ権力、ダーティーヒーローで、それが庶民にウケたんですな。

ところが一休さんも水戸黄門も全国区となって、東京のメディアが発信するとなると、そのキャラクター像が変容します。例えば「テレビアニメ一休さん」では一休さんが太政大臣・将軍の足利義満を助けたり、「テレビドラマ水戸黄門」では黄門さまは幕府の手先のお目付役のようになってしまう。「お上」には逆らわない存在に加工されてしまう。毒を抜かれるといいますか、いかにもお江戸らしい。こういうのを見ると、やっぱり東京は官僚のまちやなぁ、と思います。

大阪は庶民のまちです。立川文庫には、その庶民性が息づいている。だから、面白い。


2011年 1月 8日
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