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岡正雄 『日本文化の基礎構造』~日本列島に伝播した「種族文化複合」~

2011 年 5 月 17 日

世界的な文化人類学者、民俗学者の岡正雄氏(1898年・明治31年~1982年・昭和57年 長野県松本市生まれ)の研究によると、先史時代の日本列島には少なくとも5つの種族文化が伝播したとか。大まかな括りで、後代の研究によって加筆修正されている部分も多々あるそうですが、岡正雄氏が提唱する「種族文化複合」の考え方そのものは先ず間違いないでしょう。「日本は単一民族!」なんてことを声高に叫ぶ人は、もう少し岡正雄を勉強した方がええかも知れません。

以下は、岡正雄氏による日本列島に伝播した種族文化の箇条書き。

①母系的・秘密結社的・芋栽培=狩猟民文化(メラネシア方面)
縄文中期はじめ頃日本に流入
メラネシア原住民の文化と著しく一致
(乳棒状石斧・棍棒用石環・石皿・土器形態と文様・土偶・土面・集団構造)
男性秘密結社の祭り(ナマハゲ)・タロ芋の一種であるサトイモを祭事の折の食物にする

②母系的・陸稲栽培=狩猟民文化(東南アジア方面)
縄文末期に日本に流入
狩猟生活とともに山地丘陵の斜面の焼畑において陸稲を栽培した
(太陽神アマテラスの崇拝・家族的・村落共同的シャーマニズム・司祭的女性支配者)

③父系的・「ハラ」氏族的・畑作=狩猟民文化(北東アジア・ツングース方面)
弥生初期に満州、朝鮮方面からツングース系統のある種族によって日本に流入
粟や黍を焼畑で栽培しながらも狩猟も行った
アルタイ語系の言語を最初に日本に持ち込んだのはこの種族
(櫛目文土器・穀物の穂摘み用半月系石器)
日本語のウカラ、ヤカラ、ハラカラなど同属集団を意味する言葉ハラ=カラは
ツングース諸語において外婚的父系同属集団を呼んだ語ハラ(Hala)に系統を引く。

④男性的・年齢階梯制的・水稲栽培=漁撈民文化(中国江南地方)
紀元前4~5世紀頃、揚子江の夏口地方よりも南の沿岸地域から
呉・越両国滅亡に伴う民族移動の余波として日本に渡来したもの。
弥生文化における南方的と言われる諸要素を日本列島にもたらした
アウストロネシア系の種族文化。(水稲耕作・進んだ漁撈技術・板張り船)
若者宿、娘宿、寝宿、産屋、月経小屋、喪屋など
機能に応じて独立の小屋を建てる慣習も
年齢階梯制(年齢や世代の区分で社会を階層づける社会組織)によるもの。

⑤父権的・「ウジ」氏族的=支配者文化(アルタイ・朝鮮半島)
支配者王侯文化・国家的支配体制を持ち込んだ天皇氏族を中心とする部族の文化。
④の文化と同系同質の種族が、西から来たアルタイ系騎馬遊牧民によって征服され
国家に組織されることによって、満州南部に置いて成立したが
1世紀前から南下し始め朝鮮半島南部に暫く留まり3~4世紀頃に日本列島に渡来。
大家族・「ウジ」族・種族のタテの三段に構成される種族構造。
「ウジ」父系的氏族、軍隊体制、王朝制、氏族長会議、奴隷制、氏族職階製、
各種の職業集団、鍛冶職集団などを所有。
氏族や種族を五つの部分に区画する「五組織」的な社会及び軍事の構造もこの文化。
天神崇拝、父系的祖先崇拝、職業的シャーマニズムなどの宗教要素もこの文化。
ユーラシア・ステップ地域の騎馬遊牧民の文化と本質的に完全一致する。

ちなみに、岡正雄氏は、ウィーン大学へ提出した博士論文で、日本の基層文化を論じて、5巻1452ページに及ぶという畢生の大著『古日本の文化層』があるのですが、これは現在に至るまでも邦訳が無く、未刊のままやそうです。岡正雄氏の偉業を、ちゃんと翻訳して発表しないというのは、日本の学会の怠慢やないでしょうか?こういう学問をしても儲からないということなのかも知れませんが・・・良識ある出版社と知性のある学者の仕事を期待したいです。


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