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乗客は電車が創造する

2011 年 8 月 15 日

阪神電車いうんは、文字通り大阪と神戸を結ぶ電車です。都市と都市とを結ぶ、当たり前の、当然の、大衆の需要にお答えした電車です。現実的で堅実でリアル。足。交通機関。

対する阪急いうんは元は「箕面有馬鉄道」。箕面の滝と有馬温泉を結ぶ電車からスタートしました。滝も温泉も風光明媚な景勝地。人間なんて住んでません。猿しかいなかった。これ、ほんまです。そんなところに鉄道を通して電車を走らせた。

やったのは阪急創業者の小林一三。当時の鉄道経営のセオリーから言えば常識外れ。横紙破りです。しかし小林一三はやった。田舎に鉄道を走らせ、同時に駅周辺の土地を買い漁り(なんせ田舎だから安い)そこに新興住宅を開発して「サラリーマンでも月賦払いでマイホームが持てまっせ!」とやった。これが当たったんですな。俗に言う郊外都市構想。または田園都市構想。住むとこ(職場)と働くとこ(住居)を分けた。職住分離のはじまり。

さらに小林一三は、何もない新興土地では面白くないと、エンターテイメント施設を人工的に作り上げることを思いつきます。そこではじめたのが宝塚少女歌劇団。これは大阪ミナミ、宗右衛門町の芸妓学校がヒントでした。これまた大ヒットして、やがて東京宝塚→東宝が出来て映画興行の世界にも進出していきます。

小林一三曰く「乗客は電車が創造する」。乗客がいるとこに電車を走らせるのではなく、まず電車を走らせ、その後、そこに乗客を載せるために、あの手この手のまちづくりに着手する。逆転の発想ですな。

阪急電車はだから、良いようにいえば夢があります。憧れがあります。新興住宅。マイホーム。週末には家族団欒で明るく楽しい宝塚歌劇へ。東宝映画へ。しかし悪いようにいえば地に足がついてないんですな。生活がない。フワフワしてる。リアルじゃない。妙な浮遊感に包まれている。それが阪急電車の特徴です。

神戸ってまちは、そんな性格差、思想差のある阪神電車と阪急電車が東西を併走している。その面白さがあります。落差。ギャップ。これは大阪や京都、東京、他都市には、なかなか見受けられません。


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