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2017 年 3 月 20 日 のアーカイブ

■当事者研究スゴロクについて

2017 年 3 月 20 日 Comments off

当事者研究スゴロクについて
https://goo.gl/cdhflj
http://wp.me/pxlkK-27j

■当事者研究スゴロクについて
2017/3/20 陸奥 賢 記

【当事者研究について】
当事者研究スゴロクの「当事者研究」とは、北海道浦河町にある「べてるの家」と「浦河赤十字病院精神科」ではじまったアセスメントとリハビリテーションのプログラムである。精神障害当事者の幻聴や幻覚は「治さないといけない病気」ではなくて「その人なりの自助」であると捉えるところに特徴がある。そして、それらを開示し、仲間や関係者と一緒に考えて、さらに「その人なりの生きやすい自助」のパターンを見つけようとする研究のことを指す。

もう少し具体的な研究の一例を挙げれば、べてるの家では精神障害当事者の若者Aが来て、幻聴に苦しんでいるとすると、その幻聴を「幻聴さん」と擬人化して客人のように扱う。そして幻聴が聞こえたとなると、その場にいる精神障害の当事者全員で、その場には見えない幻聴さんに向かって話かけていく。

若者A「最近、また幻聴さんがひどいんです」
当事者B「いま幻聴さん、何ていってるの?」
若者A「Kくんを殴れと幻聴さんはいってます」
当事者C「Kくんはなにも悪いことしてないよ」
当事者D「そんなことしたらダメだと幻聴さんにいってあげて」
若者A「幻聴さん、Kくんはなにも悪いことをしてません。だからぼくは殴れません」

このような幻聴さんとのやり取りが全員で続けられていく。そうすると、幻聴自身はなくならないが、いつのまにか幻聴さんの言葉の中身が変わってくるという不思議な現象が起きるという。つまり幻聴さんは来るが若者Aに対して「最近、がんばってるなぁ」「このあいだはよかったぞ」などと優しい幻聴さんになり、結果として若者は暴れなくなる。

これは幻聴という病状がなくなったわけではないので、医学的な「治療」ではない。依然として幻聴は聞こえ続ける。しかし、暴力的、自虐的な幻聴を、みんなで幻聴さんとして迎え入れると、なぜか優しい幻聴さんになってくる。べてるの家の独特の言葉で表現すると、これは「幻聴さんと友達になった」という状況を指す。こういった自分の病気やダメとされる部分…「弱さ」を治そうとするのではなくて、その「弱さ」を受け入れて抱えたまま、みんなで活かしていくことを当事者研究という。

当事者研究スゴロクは、この精神障害の現場で発生した当事者研究という考え方や思想に共感、インスパイアされて作られた人生スゴロクである。

【当事者研究スゴロク】

https://tk-sugoroku.jimdo.com/

※上記、サイトにてダウンロードが可能。

【当事者研究スゴロクの遊び方】
※用意するもの:当事者研究スゴロク、メモ、ペン、コマ、サイコロ

①基本は4名で1グループを作る。2名でも6名でも遊べるが推奨は4名。人数が多いときはチームをわけて実施する。

②自分の人生を振り返り、過去に経験した「失敗・挫折・苦労」のエピソードをメモに書いていく。ひとり何個でも構わない。「トラウマを泣きながら吐露する」といったものではないので、自分が冷静となって、書ける範囲、話せる範囲のエピソードで留めること。※ちなみに、このエピソードには「テーマ」を決めてもいい。例えば「恋愛(にまつわる苦労、失敗、挫折)」「就職」「家族」「上司」「お金」「介護」「DV」「LGBT」など。

③メモをお互いに見せあって、どんな苦労・失敗・挫折であったのか?詳しい内容を話し合う。

④メモ(エピソード)を一文にまとめて、四角い白枠に書きこんでいく。書きこむ白枠は全部で8枠あるので、4人1グループでやっているさいは、参加者ひとりにつき、2枠(2つのエピソード)を書きこむ。

⑤失敗・挫折・苦労のエピソードの「稀少レベル」を全員で6段階で評価する。よくある失敗、挫折、苦労のエピソードなどは「1コマ」となり、すごい衝撃(レアで稀な苦労、失敗、挫折)のエピソードなどは「6コマ」となる。聞いたことのない失敗、とんでもない挫折、想像を絶する苦労であればあるほど、高く評価される。コマ数を決めたら白枠の下にある「○コマすすむ」の中に数字を書きこむ。

⑥ようやく当事者研究スゴロクが完成。いよいよスゴロクで遊ぶ。4人分のコマをスタート地点に並べて、サイコロを振って、スゴロクをスタートする。

⑦最初の1コマから6コマは「自己病名」をつける。スゴロクの右欄にある「みんなの自己病名枠」に書きこむ。この自己病名とは医者がつける「統合失調症」や「双極性障害」といった医学的な病名ではなく、自分が現在、感じている苦労、失敗、挫折を織り込んだ自己流の病名のことである。※例:「問題先送り症候群」「なんちゃって優等生病」「すべてにおいて上の空シンドローム」など。

⑧「幻聴さんがやってきた!」のコマは「もしあなたに幻聴さんがやってきたら、いま、なんていっていますか?」という意味の問いであり、その答えを考えて「ふきだしの枠」の記載する。

⑨「今晩、イクメさんが来るよ」のコマは、あなたの言いたい本音が顔にイタズラ書きされるという幻視(イクメさんの仕業とべてるでは表現する)であり、自分にもイクメさんが来ると想像して、顔にかかれる「言葉」や「絵」をコマに記載する。

⑩「格言コマ」は読み上げる。この格言には当事者研究のエッセンスが込められている。

⑪全員のコマがゴールをすれば、終了。

※最初はなかなか「失敗、苦労、挫折のエピソードを書いて」といっても書きにくい。「初対面なので緊張する」という場合もあるし、「知り合いがいるので書きにくい」という場合もある。そのさいは失敗、苦労、挫折のエピソードを書くメモを匿名で書くとしても良い。そのさいは誰かひとりが進行役となって、メモを集めて、ひとつひとつ発表していく。いろんなエピソードを読みあげて、みんなで感想や意見を言い合う。このさいに「じつはそのエピソードは私です」と名乗り出たい人は、名乗りでてもいいとする。名乗り出た場合は、より詳細なエピソードが聞きだせる。匿名バージョンの当事者研究スゴロクの場合は、本人の自由意思を尊重して「このエピソードは誰ですか?」と詮索するのはやめましょう。

【当事者研究スゴロクの効果・ねらい】
①過去にあった人生スゴロクの大部分が「上昇していく生き方」を目指すが、当事者研究スゴロクは「下降していく生き方」こそが人生の醍醐味であると捉え、衝撃的な失敗、苦労、挫折の持ち主を「人生の偉大なる先達」「下降人生の達人」として褒め称える。

②失敗・挫折・苦労エピソードを話すが、その「稀少レベル」「衝撃レベル」をみんなで評価することで、自分の失敗、挫折、苦労を「大変だと思ってたけど3コマぐらいなんだ…(自分の失敗や苦労や挫折なんてまだまだである)」とか「6コマレベルですごいといわれた!(失敗のエピソードだが、人生の達人と褒められた。嬉しい)」といったように相対化できる。

③当事者研究スゴロクを体験すると、いざ人生の失敗、苦労、挫折が起きた時に「これで、いいスゴロクコマのネタができた…」と考えることもできる。失敗や苦労、挫折の経験を「スゴロクのコマ」というものに「外在化」して切り離すことに成功しているわけで、痛みやショックを和らげることができる。

④やればやるほど「6コマレベル」を目指したくなるので、どんどんとみんなが、より衝撃の失敗・挫折・苦労エピソードを語りだす。「弱さの情報公開」が進むわけだが、「Aくんはそういうところがある」「Bさんてそういう人間なんや」とその周知や理解が生きやすさに繋がっていく。

⑤医療の現場で誕生した、高度で専門的な「当事者研究」であるが、それを全く知らない人間でも気軽に楽しめる、アイスブレイク的なコミュニケーション・ツールである。

⑥大阪は商人のまちだが、商いは「自分はこれはできないが、これはできる」と「弱さの情報公開」をして、腹を割って話をしないと先に進まない。「できるというので、やらせてみたができませんでした。逃げました」といったように「武士は食わねど高楊枝」と自分の実力を大きくいう見栄っぱりな人間は嫌われる。しかし、自分の弱さを情報公開するのはなかなか難しい。そこで「笑い」によって、それを自然に成し遂げる。「大阪人の笑い」というのは基本的に「自分の失敗話」であり、Aくんが「最近、こんな失敗したんや」と話をすると、それをうけてBくんは「お前、アホやなぁ!おれは、このあいだこんなことあったわ」と話す内容は、Aくんよりもさらに酷い失敗話を繰り広げる。そうやって「笑い」でオブラートに包みながら、自分の弱さを徐々に情報公開しながら、相手の弱さの情報公開を聞き出して、「ぼくはこんなダメな人間ですが、よろしければお付き合いください」「いえいえ。ぼくこそ、こんなにダメな人間ですが、よろしくおつきあいください」と弱さを基軸に社交していく。当事者研究スゴロクをやっていると、自然と、こうした「大阪的笑いのコミュニケーション」が獲得できる。

⑦日本では「世間さま、他人さまに迷惑をかけてはいけない」といって育てられるが、インドでは「人間はカンペキな存在ではない。自分は絶対に他人に迷惑をかける。だから他人に迷惑をかけられても文句はいわないで助けてやれ」と育てられるという。人間は弱い生き物で、変でダメな存在だが、それは「お互いさま」であり、だから「許しあおう」「助け合おう」という思想が広まる。「迷惑をかけるな」という社会からは、寛容性がなくなっていき、その結果、どんどんと「生きづらい社会」になっていく。誰もが互いに弱さを認め合える社会こそが、多様な生き方を肯定できる社会につながっていくのではないか?当事者研究スゴロクには、そうした思想が込められている。

当事者研究スゴロクについて_01

当事者研究スゴロクについて_02

当事者研究スゴロクについて_03

当事者研究スゴロクについて_04

当事者研究スゴロクについて_05



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■3/22(水)19時よりDIVE(大阪舞台芸術協会)事務所にてシアターサロン〈番外編〉「劇札で遊んでみよう!」開催!参加者募集中!

2017 年 3 月 20 日 Comments off

■3/22(水)19時よりDIVE(大阪舞台芸術協会)事務所にてシアターサロン〈番外編〉「劇札で遊んでみよう!」開催!参加者募集中!

https://www.facebook.com/events/1863018537289006/

劇団活動や個人の演劇活動が円滑に進むような知恵や情報を共有し、また、関西小劇場の発展のために考える場づくりを行うシアターサロン。

今回は番外編として、「劇札」という遊びをしてみたいと思います。「劇札」は「演劇フライヤー(演劇チラシ)を使った遊びで、陸奥賢(観光家/コモンズ・デザイナー/社会実験者)さんが考案したものです。

今回、考案者の陸奥さんをゲストに迎え、一緒に「劇札」で遊んでみようと思います。公演が終わってしまったらチラシとしての価値がほとんどなくなってしまう演劇のチラシ。

「劇札」という遊びをきっかけに、演劇の可能性について考える場にしたいと思います。

■開催日程:3月22日(水)19:00~21:30頃
■開催場所:NPO法人大阪現代舞台芸術協会(DIVE)
〒542-0083 大阪市中央区東心斎橋2-1-27周防町ウイングス5階C号室
《URL》http://www.ocpa-dive.com/
《twitter》https://twitter.com/dive_osaka/
《facebook》https://www.facebook.com/diveosaka/
■定員:12名
■参加費:DIVE会員 無料
一般 500円
■持ち物:ペン+演劇フライヤー
■ご予約・お問い合わせ:diveosaka@gmail.com
上記アドレスに、お名前/人数/ご連絡先を明記の上、メールをお送りください。こちらからの返信を以てご予約完了となります。(席に限りがあるため定員に達した場合、予約を締め切る場合がございます。あらかじめご了承下さい。)

▼劇札について
■作劇のヒントやワークショップに!
「劇札」PDF&JPEGダウンロード先
goo.gl/TlTZ1X

■「劇札」facebookページ

https://www.facebook.com/gekifuda/

■劇札(PDFバージョン)ダウンロード先

①「劇札」取扱説明書ダウンロード(goo.gl/XPjjgg)
②「劇札」vol.1ダウンロード(goo.gl/9EXTSx)
③「劇札」vol.2ダウンロード(goo.gl/iGNhNc)
④「劇札」vol.3ダウンロード(goo.gl/0lO4jk)
⑤「劇札」白札ダウンロード(goo.gl/QN0MWv)

■演劇シチュエーションカード「劇札(げきふだ)」とは?
「演劇フライヤー(演劇チラシ)を見ながら、自分勝手に、直観で、妄想で、オリジナルのストーリーを作りあげる」・・・といった遊びをやったことはありませんか?

「劇札」(げきふだ)は、その遊びをもっと簡単に、みんなで楽しめるように・・・と陸奥賢(観光家/コモンズ・デザイナー/社会実験者)が考案したものです。古今東西の演劇作品をリサーチして「演劇でよくあるシチュエーション(状況、境遇、展開)」を96枚のカードにしました。この「劇札」と演劇フライヤーを組み合わせると、いろんなオリジナルのストーリーが作りやすくなります。

また「劇札」は「いつでも、どこでも、だれでもできる」というコモンズ・デザインで、オープンソースですので、自由にプリントアウト(A3サイズ推奨)してご使用できます(文字が書かれていない、白紙のものもダウンロードできます。これでみんなで新しい「劇札」を考案して作ることもできます)。作劇のヒントにするもよし。演劇のワークショップに使うもよし。あなたなりの「劇札の活用法」「劇札遊び」をぜひとも考案してみてください。

■クレジット
劇札企画・制作:陸奥賢&沖田みやこ
劇札イラスト&デザイン:田中保帆、小田嶋裕太
協力:浄土宗大蓮寺塔頭應典院


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揚子江!!! 小倉人のソウルフードらしいですw

2017 年 3 月 20 日 Comments off
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シロヤ。これも小倉人のソウルフードらしいですw めっさ並んでた…。

2017 年 3 月 20 日 Comments off
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東長寺。福岡大仏。

2017 年 3 月 20 日 Comments off
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聖福寺。

2017 年 3 月 20 日 Comments off
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平岡浩太郎墓。玄洋社創立者。頭山満の碑文が刻まれてましたw

2017 年 3 月 20 日 Comments off
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廣田弘毅首相の墓

2017 年 3 月 20 日 Comments off

廣田弘毅首相の墓。福岡出身の首相は廣田弘毅と麻生太郎の2人。

廣田弘毅は軍人ではなくてA級戦犯で絞首刑になった唯一の文官。優柔不断な首相で軍部の独走を止められなかったとも言われるし、自らが罪をかぶって昭和天皇を守ったともいわれる。その昭和天皇からはあまり信用されてなかったそうですが…。

毀誉褒貶激しい。時代に翻弄されたんでしょうな。南無阿弥陀仏。


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漢委奴国王印

2017 年 3 月 20 日 Comments off

ほんまもんの「漢委奴国王印」の大きさ(1寸。約2.3センチ。ビックリするぐらい小さい)を知ってると、この大きさは詐欺やないかと…w


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当事者研究スゴロクってなんですか?

2017 年 3 月 20 日 Comments off

「当事者研究スゴロクってなんですか?」「当事者研究スゴロクもやってみたいんですが、どうやればいいんですか??」といった質問が立て続けに来まして・・・ちょっと、まとめてみました。

まわしよみ新聞や直観讀みブックマーカーとは、また一味違うコモンズ・デザイン。機会があれば、ぜひやってみてくださいm(_ _)m

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■当事者研究スゴロクについて
2017/3/20 陸奥 賢 記

http://wp.me/pxlkK-27j

【当事者研究について】
当事者研究スゴロクの「当事者研究」とは、北海道浦河町にある「べてるの家」と「浦河赤十字病院精神科」ではじまったアセスメントとリハビリテーションのプログラムである。精神障害当事者の幻聴や幻覚は「治さないといけない病気」ではなくて「その人なりの自助」であると捉えるところに特徴がある。そして、それらを開示し、仲間や関係者と一緒に考えて、さらに「その人なりの生きやすい自助」のパターンを見つけようとする研究のことを指す。

もう少し具体的な研究の一例を挙げれば、べてるの家では精神障害当事者の若者Aが来て、幻聴に苦しんでいるとすると、その幻聴を「幻聴さん」と擬人化して客人のように扱う。そして幻聴が聞こえたとなると、その場にいる精神障害の当事者全員で、その場には見えない幻聴さんに向かって話かけていく。

若者A「最近、また幻聴さんがひどいんです」
当事者B「いま幻聴さん、何ていってるの?」
若者A「Kくんを殴れと幻聴さんはいってます」
当事者C「Kくんはなにも悪いことしてないよ」
当事者D「そんなことしたらダメだと幻聴さんにいってあげて」
若者A「幻聴さん、Kくんはなにも悪いことをしてません。だからぼくは殴れません」

このような幻聴さんとのやり取りが全員で続けられていく。そうすると、幻聴自身はなくならないが、いつのまにか幻聴さんの言葉の中身が変わってくるという不思議な現象が起きるという。つまり幻聴さんは来るが若者Aに対して「最近、がんばってるなぁ」「このあいだはよかったぞ」などと優しい幻聴さんになり、結果として若者は暴れなくなる。

これは幻聴という病状がなくなったわけではないので、医学的な「治療」ではない。依然として幻聴は聞こえ続ける。しかし、暴力的、自虐的な幻聴を、みんなで幻聴さんとして迎え入れると、なぜか優しい幻聴さんになってくる。べてるの家の独特の言葉で表現すると、これは「幻聴さんと友達になった」という状況を指す。こういった自分の病気やダメとされる部分…「弱さ」を治そうとするのではなくて、その「弱さ」を受け入れて抱えたまま、みんなで活かしていくことを当事者研究という。

当事者研究スゴロクは、この精神障害の現場で発生した当事者研究という考え方や思想に共感、インスパイアされて作られた人生スゴロクである。

【当事者研究スゴロク】

https://tk-sugoroku.jimdo.com/

※上記、サイトにてダウンロードが可能。

【当事者研究スゴロクの遊び方】
※用意するもの:当事者研究スゴロク、メモ、ペン、コマ、サイコロ

①基本は4名で1グループを作る。2名でも6名でも遊べるが推奨は4名。人数が多いときはチームをわけて実施する。

②自分の人生を振り返り、過去に経験した「失敗・挫折・苦労」のエピソードをメモに書いていく。ひとり何個でも構わない。「トラウマを泣きながら吐露する」といったものではないので、自分が冷静となって、書ける範囲、話せる範囲のエピソードで留めること。※ちなみに、このエピソードには「テーマ」を決めてもいい。例えば「恋愛(にまつわる苦労、失敗、挫折)」「就職」「家族」「上司」「お金」「介護」「DV」「LGBT」など。

③メモをお互いに見せあって、どんな苦労・失敗・挫折であったのか?詳しい内容を話し合う。

④メモ(エピソード)を一文にまとめて、四角い白枠に書きこんでいく。書きこむ白枠は全部で8枠あるので、4人1グループでやっているさいは、参加者ひとりにつき、2枠(2つのエピソード)を書きこむ。

⑤失敗・挫折・苦労のエピソードの「稀少レベル」を全員で6段階で評価する。よくある失敗、挫折、苦労のエピソードなどは「1コマ」となり、すごい衝撃(レアで稀な苦労、失敗、挫折)のエピソードなどは「6コマ」となる。聞いたことのない失敗、とんでもない挫折、想像を絶する苦労であればあるほど、高く評価される。コマ数を決めたら白枠の下にある「○コマすすむ」の中に数字を書きこむ。

⑥ようやく当事者研究スゴロクが完成。いよいよスゴロクで遊ぶ。4人分のコマをスタート地点に並べて、サイコロを振って、スゴロクをスタートする。

⑦最初の1コマから6コマは「自己病名」をつける。スゴロクの右欄にある「みんなの自己病名枠」に書きこむ。この自己病名とは医者がつける「統合失調症」や「双極性障害」といった医学的な病名ではなく、自分が現在、感じている苦労、失敗、挫折を織り込んだ自己流の病名のことである。※例:「問題先送り症候群」「なんちゃって優等生病」「すべてにおいて上の空シンドローム」など。

⑧「幻聴さんがやってきた!」のコマは「もしあなたに幻聴さんがやってきたら、いま、なんていっていますか?」という意味の問いであり、その答えを考えて「ふきだしの枠」の記載する。

⑨「今晩、イクメさんが来るよ」のコマは、あなたの言いたい本音が顔にイタズラ書きされるという幻視(イクメさんの仕業とべてるでは表現する)であり、自分にもイクメさんが来ると想像して、顔にかかれる「言葉」や「絵」をコマに記載する。

⑩「格言コマ」は読み上げる。この格言には当事者研究のエッセンスが込められている。

⑪全員のコマがゴールをすれば、終了。

※最初はなかなか「失敗、苦労、挫折のエピソードを書いて」といっても書きにくい。「初対面なので緊張する」という場合もあるし、「知り合いがいるので書きにくい」という場合もある。そのさいは失敗、苦労、挫折のエピソードを書くメモを匿名で書くとしても良い。そのさいは誰かひとりが進行役となって、メモを集めて、ひとつひとつ発表していく。いろんなエピソードを読みあげて、みんなで感想や意見を言い合う。このさいに「じつはそのエピソードは私です」と名乗り出たい人は、名乗りでてもいいとする。名乗り出た場合は、より詳細なエピソードが聞きだせる。匿名バージョンの当事者研究スゴロクの場合は、本人の自由意思を尊重して「このエピソードは誰ですか?」と詮索するのはやめましょう。

【当事者研究スゴロクの効果・ねらい】
①過去にあった人生スゴロクの大部分が「上昇していく生き方」を目指すが、当事者研究スゴロクは「下降していく生き方」こそが人生の醍醐味であると捉え、衝撃的な失敗、苦労、挫折の持ち主を「人生の偉大なる先達」「下降人生の達人」として褒め称える。

②失敗・挫折・苦労エピソードを話すが、その「稀少レベル」「衝撃レベル」をみんなで評価することで、自分の失敗、挫折、苦労を「大変だと思ってたけど3コマぐらいなんだ…(自分の失敗や苦労や挫折なんてまだまだである)」とか「6コマレベルですごいといわれた!(失敗のエピソードだが、人生の達人と褒められた。嬉しい)」といったように相対化できる。

③当事者研究スゴロクを体験すると、いざ人生の失敗、苦労、挫折が起きた時に「これで、いいスゴロクコマのネタができた…」と考えることもできる。失敗や苦労、挫折の経験を「スゴロクのコマ」というものに「外在化」して切り離すことに成功しているわけで、痛みやショックを和らげることができる。

④やればやるほど「6コマレベル」を目指したくなるので、どんどんとみんなが、より衝撃の失敗・挫折・苦労エピソードを語りだす。「弱さの情報公開」が進むわけだが、「Aくんはそういうところがある」「Bさんてそういう人間なんや」とその周知や理解が生きやすさに繋がっていく。

⑤医療の現場で誕生した、高度で専門的な「当事者研究」であるが、それを全く知らない人間でも気軽に楽しめる、アイスブレイク的なコミュニケーション・ツールである。

⑥大阪は商人のまちだが、商いは「自分はこれはできないが、これはできる」と「弱さの情報公開」をして、腹を割って話をしないと先に進まない。「できるというので、やらせてみたができませんでした。逃げました」といったように「武士は食わねど高楊枝」と自分の実力を大きくいう見栄っぱりな人間は嫌われる。しかし、自分の弱さを情報公開するのはなかなか難しい。そこで「笑い」によって、それを自然に成し遂げる。「大阪人の笑い」というのは基本的に「自分の失敗話」であり、Aくんが「最近、こんな失敗したんや」と話をすると、それをうけてBくんは「お前、アホやなぁ!おれは、このあいだこんなことあったわ」と話す内容は、Aくんよりもさらに酷い失敗話を繰り広げる。そうやって「笑い」でオブラートに包みながら、自分の弱さを徐々に情報公開しながら、相手の弱さの情報公開を聞き出して、「ぼくはこんなダメな人間ですが、よろしければお付き合いください」「いえいえ。ぼくこそ、こんなにダメな人間ですが、よろしくおつきあいください」と弱さを基軸に社交していく。当事者研究スゴロクをやっていると、自然と、こうした「大阪的笑いのコミュニケーション」が獲得できる。

⑦日本では「世間さま、他人さまに迷惑をかけてはいけない」といって育てられるが、インドでは「人間はカンペキな存在ではない。自分は絶対に他人に迷惑をかける。だから他人に迷惑をかけられても文句はいわないで助けてやれ」と育てられるという。人間は弱い生き物で、変でダメな存在だが、それは「お互いさま」であり、だから「許しあおう」「助け合おう」という思想が広まる。「迷惑をかけるな」という社会からは、寛容性がなくなっていき、その結果、どんどんと「生きづらい社会」になっていく。誰もが互いに弱さを認め合える社会こそが、多様な生き方を肯定できる社会につながっていくのではないか?当事者研究スゴロクには、そうした思想が込められている。


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