ホーム > 雑感 > 江戸入府

江戸入府

2023 年 3 月 17 日

一所懸命の戦国時代。自分の一所=領地を増やそうとして隣の領地に攻めたり攻められたりというのを繰り返していたのが戦国時代。勝った方が負けた方の領地を手に入れていくという非常にわかりやすい陣取りゲーム。

それに対して秀吉が北条征伐、小田原攻めで手に入れた関東を家康が治める…というのが江戸入府。自分で戦って、相手を打ち負かして手に入れた領地ならば話はわかりやすいが、北条を倒したのはあくまでも秀吉。家康ではない。

長く住み慣れた東海150万石から秀吉の鶴の一声でいきなり関東250万石へ。戦国史上初にして最大、それ以降もこれほどの規模の領地替え(お引越し)というのは日本史上にないでしょう。これはなかなか特異で特殊な事情です。こうやって作られた大都市というのは他にあまりない。

また家康は北条とは長く小競り合いを続けていたから、北条の領民からすると元々、敵であった家康が秀吉の命令で偉そうにやってきて関東の領地を経営するなんていうのは「なんだてめこのやろばろちくしょ」という一触即発で、なんかあれば即揉め事を起こしてやろうという不穏な空気も多分にあったろうと思う。

家康からすると、領地替えの秀吉の鶴の一声はとんでもない青天の霹靂の嫌がらせであるが、もしこれで関東の民と揉め事を起こしたりすれば、突然これまた秀吉の鶴の一声で「経営者失格」の烙印を押されて「関東剥奪」という最悪の事態だってあり得る。絶対に失敗できない崖っぷちの領地経営、都市設計、まちづくりだった。

家康が本拠地として武士政権の古都である鎌倉や北条の本拠地の小田原ではなくて、あまり人のいない江戸を選んだのも当然といえば当然で、先住民が多ければ多いほど揉め事、トラブルの発生率が高くなる。なるべく人が少ない、新興の土地を選択しておく方が領地経営として安パイという判断をしたと思われる。

江戸に入った家康がまずやったことのひとつは、岸井さんの話によると、あちらこちらで鷹狩をしたとか。要は「ご挨拶回り」で、江戸の民にご挨拶して、交流して、信頼を勝ち得ないと何も出来ないと懐柔策を行ったということだろう。

また神田山を切り崩して江戸湾(日比谷)を改修して、江戸漁民のための土地を造成したり、大坂の佃・大和田(佃島はそこから生まれた。大和田の漁民の方が多かったと大和田の人は今もいう。佃島やない!大和田島や!というわけですw)の漁民を連れてきて上方最新の漁法を伝授したりもしている。家康の涙ぐましい努力というか、もう至れり尽くせりという感じである。

これはしかしそれもそのはずで、前門の虎・後門の狼ではないが、前門に北条の民がいて、後門に秀吉の鶴の一声があるから、家康としては非常にストレスフルで緊張感のある江戸の都市計画、まちづくりであったろう。

江戸が螺旋状の「の」とか「@」みたいな防御最優先の城構造=都市構造になるのは当然で、これは明らかに対秀吉。対豊臣政権。いつ、どんな失態をでっち上げられ、秀吉の鶴の一声で北条攻め再現の徳川攻め、小田原攻めの再現の江戸攻めがあるかわからないので、リスクマネージメント、危機管理として江戸城の24時間年中無休の戦闘体制状態は解除できない。

秀吉の大坂は、その都市構造、まちづくりをみるとわかるが、基本、船場、島之内、上町も碁盤目状に整備していて、さすが天下人の都市。「攻められる」ということをそれほど意識していない。少なくとも家康の江戸ほどの緊張感はない。

僕なんかは江戸、東京を歩くたびに、道が曲がりくねってるたびに、家康の恐怖心、猜疑心のようなものを感じる。その用意周到さと巧緻さにも驚く。大阪のまっすぐな筋や通りを歩いていると天下人・秀吉の明朗快活さと、その愚昧さに気づくw

これはそのまま住民の、東京人、大阪人の基本性質のようなものになっている気もする。環境こそが人間を作るから。都市の構造は、そこに住む都市民のパーソナリティにも知らず知らず影響を及ぼしていることだろう。

また神保町は神田山(湯島聖堂、神田明神)、将門塚に挟まれていて、これは家康の江戸統治システムのアメとムチなのでは?という直観が今回のリサーチで働いたのだが、これはもうちょっと考察が欲しい。九段(靖国神社)と神田の高低差、ギャップも気になっているが全くリサーチできなかった。

都市のリサーチ、逍遥に終わりはない。謎は増えていくばかり…。

———————————

■PARA:陸奥賢・岸井大輔と5日でどこまでリサーチできるかな

https://paratheater.com/4881b04a31154cc7839591d20e814eb4

■PARA:共有をつくるには?

https://paratheater.com/65cecbf53e2a49b09c43b4321d5f4179

■PARA

https://paratheater.com/


カテゴリー: 雑感 タグ: