堺が生んだ幻の天才女流画家 『島成園と浪華の女性画家』(編集:小川知子/産経新聞大阪本社 出版:東方出版)
2007 年 11 月 1 日
買いました。京都の上村松園、東京の池田蕉園と並び称されて「三都三園」と呼ばれた浪華の島成園。堺が生んだ幻の天才女流画家の画集です。
※島成園
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B3%B6%E6%88%90%E5%9C%92
なにわ人物伝 島成園(上)
なにわ人物伝 島成園(下)
生まれは堺市の熊野町(ゆやちょうと読みます)。父親は堺の襖絵師で、母親は堺・乳守の遊女出身。「乳守」(ちもり)というのは「竜神」と並んで堺でもっとも古い遊郭でした。表紙の絵は「影絵」。遊郭での他愛のないお座敷芸を描いたものでしょう。よく見るとまだ年端のいかない美しい少女ですが、この屏風の裏には旦那衆がいるわけで、残酷さとイノセンスが渾然と入り混じっています。
上村松園の美人画は気品に満ち満ちた聖化された祇園の女を描きますが、島成園はもっとリアルに肉薄して遊郭の情景を切り取ります。こうした遊郭の内実は堺・乳守遊郭で生まれ育った島成園のみに描きえた世界観でしょう。最高傑作「伽羅の薫」などは狂的で禍々しささえ漂う、ファムファタールの美を描いて圧巻です。監修されている画集は今のところ東方出版のこれだけ。
http://www.tohoshuppan.co.jp/s06-992-4.html
これはほんと久しぶりの大ヒットでした。ご興味のある方はぜひ。
カテゴリー: 雑感