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コミュニティ・ツーリズムは重要な地方都市のインフラ

2026 年 2 月 11 日

【いわき時空散走】南相馬で「ふくしま浜通りサイクルルート推進協議会」の総会があり、入会すると同時に、少しだけ、いわき時空散走についてお話する時間を頂きました。みなさま、貴重なお時間を頂戴して、本当に、ありがとうございました。

10分ほどの時間でしたが、時空散走の熱が伝わったかなぁ。伝わってたらいいなぁ…。

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「何やあの店、長いことやってて、よう潰れへんなあ」と謎に長命な店というのが世の中にはありましてw

こういう店は大体、新しいお客さんが入ったら、常連客がいて「うわ。珍し。マスター、客やでー」と注意喚起したりする。お客さんの方が、勝手におしぼりと水とメニュー表を出して、誰が店の人か?客か?よくわからない。それでいて「気がつけばもう半世紀、店をやってました」と時代の荒波をサバイブしていたりする。

常連客、リピーター、古参の客などが平気でカウンター内に勝手に入っている店。客がなぜか差し入れを持って行くというような店は強いんです。店と客の関係性が、主客が逆転して、出来上がっている。「コミュニティ化している店」といってもいい。

新しいお客さん、初めてのユーザー、新規顧客を常に開拓し続けるという商売のスタイルは、非常に大変で、しんどいです。なんせ、その手のお客さんは、流行的で、雰囲気で、胡乱で、目新しさを求めていて、移ろいやすく、無責任で、次の消費行動が読めなくて、予測不可能なので。要するに「一過性」なんです。

観光でいうと、やはりインバウンドのお客さんは、どうしても再訪率は低い客になりがちです。いろんな国、地域、外国から訪れてくれるのは嬉しいですが、また再訪してくれるか?というと、それはかなり確率としては低いものになるでしょう。

これは自分自身に置き換えてみるとわかりやすい。仮に海外旅行するとして同じ都市に行くことは、なかなか、ないです。ベルリンを訪れたら次はパリ、ロンドン、ニューヨーク、エジプト、上海、シンガポールと新しい都市に行きたがる。二度、三度、四度と同じ都市を再訪する人はほぼいないのが現状でしょう。

外から人やお金を呼ぶ「外需の観光」は、それは観光を盛り上げる、涵養するために、非常に大事なことなんですが、しかしそれと同等以上に、僕は内の人、身内、地元民、コミュニティ内部の人たちを喚起する「内需の観光」の開拓、充実、発展こそが、観光のもうひとつの可能性であり、最重要課題であろうと思って活動してきたわけです。

いわき時空散走は、日本で最初の「コミュニティ・サイクル・ツーリズム」を標榜しています。コミュニティ・ツーリズムとは何か?というと、もう簡単に、一言でいってしまうと「地産地消の観光」ということです。

「いわきの人(サポーター)が、いわきの人(ツアー参加者)と一緒になって、いわき(地元)を巡る」という構造です。また従来のツアーと違う点として、ガイドではなくて「サポーター」という形でツアー同行者がいます。

その道の専門家、プロ、有識者、学者、知識人、研究者、郷土研究家といった方がガイドをするのではなくて、「コミュニティのひと」「地元民」「まちの住民」としてサポーターとしてツアー同行します。このサポーターの役割は「交流」です。ツアー参加者のみなさんの話の「聞き役」「促し役」「ファシリテーター」になってもらってます。

いわき時空散走のツアー参加者が、ツアーで訪れた場所について、その場ですぐにアーダコーダと話ができるのは、これは「地元民」だからです。いわきの人たちだから、いわきのどの場所にいっても「思い出話」ができます。

「いまもよく訪れる」「実は店主と同級生で」「昔、友人と来た」「昔はじつはこうだった」「親戚が知り合いで」「噂話を聞いたことがある」「ここがそうだったのか」といったように、何かしらの「まちと自分の関係性」「かかわり方」があって、それを参加者全員で話をすることが可能なわけです。

こうやって参加者が口々に、銘々、ワーワーと話をするもんだから、すぐにツアーは収集がつかなくなるんですがw これはガイド(店)とツアー参加者(客)という固定的な関係性から「どっちが店の人で、どっちがお客さんかわからない?」というツアーへの変容です。

実際に、いわき時空散走に参加してもらうとわかりますが、サポーターよりもツアー参加者のみなさんの方が圧倒的にあちらこちらで話をしてくれて、ほんまに誰が主催者なのかサッパリわからないw

また、この時空散走(コミュニティ・サイクル・ツーリズム)が優れているのが、ツアー参加者が地元民なので、一度、地元を回って「新しい店」「推しの人」「お気に入り」を発見したりすると、そこに何度も通い詰めて、リピーター、常連客、固定客になりやすいこと。再訪可能性が高いんですな。

これが「一過性の遠方からきたインバウンドのツアー参加者」であると、二度三度四度の再訪はなかなか難しいのですが、おなじいわき市内在住だったりするので、じつに容易に再訪が可能です。

いわきは市町村合併で、かつて「日本一広い市」になったことがあるほど広域ですが、人口規模でいうと30万人以上の人がいます。地方都市でも中核市レベルの規模です。

30万人もの経済圏、商圏があるというのはスゴイことで。また調べると、いわき市の「生産年齢人口(15〜64歳)」は約18万人ほどらしいのですが、もし、この18万人が、仮に、月に1回でも、いわき市内を自転車で巡って遊んでくれたら、それだけで途轍もない経済波及効果が望めます。18万人×12ヶ月で年間216万人もの観光交流人口の発生です。※ちなみにいわきの観光名所といえば湯本・スパリゾートハワイアンズですが来場者は年間100万人とか。また、いわきFCのホームゲーム入場者数は年間8万3000人です。

実際に、いわき時空散走をキッカケにして、いわきの人たちが、いわき市内の店や場や人を知って、そこからいろんなネットアークや関係性やプロジェクトが生まれてきています。

地元、地域、コミュニティを活性化するには、外需の力だけではなくて、内需の力も必要不可欠です。むしろ内需を喚起して、掘り起こししないと、本当の意味で地域の活性化は成せません。インバウンド(外需)とコミュニティ(内需)と。両輪必要なんです。その内需の観光、地産地消の観光、コミュニティ・ツーリズムのプロジェクトが、いわき時空散走です。

また、ありがたいことに、いわき時空散走は7割がいわき市内の人なんですが、じつは3割はいわき市外からのお客さんです。内需で盛り上がっていますが「いわき、おもろいぞ」「時空散走、よかったよ」という声が、徐々に、いわき市外にも蔓延していって、外からのお客さんもやってくる。

熱は真ん中がアツいです。真ん中がアツいから、それが外に伝播して、外側もアツくなってくる。コミュニティ・ツーリズムは、その中の、中心の熱を高める観光の手段です。

地元、地域、ふるさとを巡るから、そこから地域愛、地元愛、郷土愛が目覚めて、「自分のまちは素晴らしいんだ。もっとよくしたいんだ」という意欲を高めることにもつながって、まちづくりのプレイヤーになる人まででてきます。

いわきでいうと、こどもたち、若者たちのいわき市外へ出る人口流出が大変な地域課題になっていますが(これは地方都市のどこでも共通課題だと思いますが)、なぜ流出するのか?ということの一因として地元愛、郷土愛、コミュニティ意識の低さもあるだろうと思います。※もちろん学びたい学校がないとか、働きたいと思える会社がないとか、諸条件はあるんでしょうが…。

いわきは車社会だから、本当に、いわきを巡っている人が少ないんですよねぇ。時速50キロ、60キロみたいな車移動の生活を繰り返していても全く、いわきのこと、地域のこと、足元のことは見えてきません。

地方から人口が流出するのは問題だと思ってますが、しかし個人的には、実は、地方都市から一度は「外に出る経験」はした方がいいと思ってます。地縁と切り離されて、無縁の人たちの集まり(大学や都市や企業など)を経験するのは非常に大切なことだとも。

しかし無縁の環境で生きることは厳しいので、セカンドキャリア、サードキャリアを再構築する場として、自分のふるさと、わがまち、郷土が候補として上がるようにはしておきたい。そのためには若いうちに、郷土、ふるさと、わがまちを知っておかないといけない。ふるさとの自負や郷土愛の種子を、ちゃんと受け継いでもらいたい。

そういう意味でもコミュニティ・ツーリズムは重要な地方都市のインフラといえます。観光振興のみならず、地方の教育、産業、経済の活性化にも繋がる重要なインフラです。

…なのに意外と、やってるところは少ないんですよねぇ。地域観光、地域経済の基本として、これをやらない手はないと思いますが…。

僕はなんだかんだでコミュニティ・ツーリズムのプロデューサーも、もう18年ほどやってきてますが、この熱が、徐々にでも、世の中に、世間の人に知られて行って、伝搬していってほしいなぁと常々、思っています。


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