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2008 年 11 月 14 日 のアーカイブ

高麗橋吉兆(本吉兆)

2008 年 11 月 14 日 Comments off

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2008年11月13日。「大阪あそ歩’08秋」の企画で、高麗橋にある本吉兆にいってきました。
http://www.kitcho.com/osaka-hon/

1979年、1986年、1993年と、過去3度の東京サミットで、先進諸国首脳をおもてなししたのが、大阪が世界に誇る日本料理の最高峰「高麗橋吉兆」(本吉兆)です。創業者の湯木貞一氏は、日本文化の「一期一会」の美学を追求して、紫綬褒章、文化功労者にも選ばれた伝説の料理人。その本吉兆の料理を味わおうというのが今回の企画で、本来は紹介制で一見さんお断りのお店なのですが、「大阪のまちの文化を見つめ直そう」ということで、本吉兆さんにご協力頂いて、今回の企画が実現しました。

伝統的な数寄屋作りの吉兆に入ると、千成瓢箪の暖簾が飾られた風情な玄関口で、最初は「澪標(みをつくし)の間」へと案内されました。本来はここもお座敷だそうですが、今回は待合室として利用されました。大阪都心のど真ん中にこんな静寂な空間があるなんて…と、その美しい静謐な佇まいだけでも一見の価値があります。

次に案内されたのが「蔀(しとみ)の間」で座席につくと本吉兆の湯木潤治社長からお献立の説明。お献立のはじめは「絵ノ具皿八寸」で、菊柚子三種、柿なます、しめじ茸とんぶり和え、烏賊キャビア添え、前菜色とりどり。次は「お椀」で、海老糝薯と焼き餅。「造里」は鯛、烏賊、子鮪。「お凌ぎ」に秋草吹寄せで、「焼きもの」は杉板焼 鰆、松茸、白葱……と、まるで極上のアート作品のような料理が次から次へと出てきて、もうなんと形容していいのやらの絶品の美味しさ。

吉兆の料理を味わって考えさせられたのは本吉兆の料理というのは決して奇をてらったようなものが出てくるのではなくて、非常に正統的でマジメな料理だということです。湯木貞一氏が吉兆の料理を完成させたときは、これは従来の日本料理にはなかった革命的なものだったと思いますが、その革命性ゆえに、もはや日本料理の「常識」になったんでしょう。極めてオーソドックス、オーセンティックな料理であって、「日本料理のスタンダードを作った」ということが、本吉兆のすごさといえます。

今回の本吉兆は、大阪くいだおれシリーズ第1弾ということで、「大阪のほんまもんの食文化を見直そうやないか」という主旨で企画されました。「くいだおれ」と聞くと、お好み焼やたこ焼きといったイメージが先行しがちですが、そういう庶民的なグルメだけではなくて、本吉兆のような日本料理を代表する世界に冠たる高級料亭文化というのも、れっきとして存在しています。このバリエーションの振幅が大阪の食文化の深さなのでしょう。大阪のほんまもんの「くいだおれ」を満喫しました。


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