伊勢神宮 式年遷宮の知恵~日本式防災都市=柔らかい都市構造~

災害で失われたまちを、新しく再建する。どんなまちを作るべきか?

地震、火山、津波、洪水の多発地域の日本において、完全な防災都市など、不可能だろうとぼくは考えます。だから、ぼくの希望をいえば、できるだけ、「元通り」に戻して欲しい。

巨大な道路。巨大な橋。スーパー堤防。区画整理された人工都市。そうではなくて。そんなものではなくて。生き残った人々の、「まちの記憶」を、忠実に、再現してほしい。記憶の中の、あの素晴らしい「ふるさと」を、なぞってほしい。

それは勇気のいることです。また、もう一度、災害にあえば、もろくも、崩れてしまう。

しかし、巨大なコストをかけて無味乾燥の、コンクリートの塊のまちを作っても、それで、果たして、本当に、住民たちが幸せになるでしょうか?そんなまちを作ることで、結果、生まれるのは「ふるさと」の喪失です。哀しき故郷難民、故郷流民、都市難民、都市流民です。

津波で橋や、道路や、家が流されても人間の心の中から、「ふるさと」というのは、なくなりません。しかし、新しく再建するときに、なんの歴史も、文化も、物語もないまちを作ってしまうと「ふるさと」は断絶して、それこそ、この地上から本当に消えてしまう。

そのことのほうが、はるかに、問題なんです。それは、自分の存在の、拠り所をなくしてしまうということです。アイデンティティを喪失してしまう。魂をロストしてしまう。

元通りにもどす。そんなまちは、また災害にあえば、すぐ潰れます。しかし逆説的にいえば、「すぐ元通りに戻せる」ということなんです。こういう「柔らかい都市構造」が結局、「ふるさと」を継承していき、歴史や文化や物語を伝えていけるんです。

伊勢神宮は、わずか20年で遷宮します。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A5%9E%E5%AE%AE%E5%BC%8F%E5%B9%B4%E9%81%B7%E5%AE%AE

建物は、20年もてばいいんです。しかし、同じ形を作り続けることで、伝統を、歴史を、文化を、守っていく。アイデンティティを守っていく。これが智恵です。伊勢神宮は、この「柔らかい構造」によって、1500年以上の命脈を保ちました。日本人は、そうやって、数多くの自然災害、天災を克服してきました。「日本式防災都市」です。

新しいまちを、どういうまちにするのか?それを決めるのは、まちの人たちです。でも、まちがった方向には進まないで欲しい。

ただただ、祈るばかりです。


2011年 3月 25日
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