ホーム > 雑感 > 平野郷の「横軸」(大念仏寺)と「縦軸」(杭全神社)

平野郷の「横軸」(大念仏寺)と「縦軸」(杭全神社)

2023 年 7 月 14 日

平野郷まち歩きにて。夏祭のだんじり。

平野郷は面白い。寺内町ではあるが、大阪にある多くの寺内町は浄土真宗の寺院がコミュニティの要として機能し、中心的な役割を果たしている。それに対して平野郷コミュニティの最大の要は大念仏寺で、これは浄土真宗ではなくて融通念仏宗の寺院だったりする。

融通念仏宗開祖の良忍さんは同じく念仏系の法然さん、親鸞さんの先輩的な存在で、その偈文は「一人一切人 一切人一人 一行一切行 一切行一行 十界一念 融通念仏 億百万編 功徳円満」という。この「一人一切人 一切人一人」は「わたしの念仏はみんなのための念仏で、みんなの念仏は、わたしひとりのための念仏である」というような意味だと融通念仏宗のお坊さんから教えてもらった。なんとなくラグビーの「One for all All for one」の合言葉にちょっと似ている。

また平野郷は坂上田村麻呂の息子・広野麻呂の所領地で開拓されたという。じつはこの坂上家の子孫がいまだに平野郷にいて「坂上七名家」として続いている。平野郷の氏神様の杭全神社は坂上一族が建立した神社で境内には坂上田村麻呂を崇め奉る田村社がちゃんとある。

ちなみに、この杭全神社には日本唯一の連歌所なんかもあり、いまも毎月、連歌の会が催されているという。所属メンバーはやはり坂上七名家のみなさんが中心的らしく、坂上一族という「血の連帯」と連歌という「文化芸術の連帯」によって繋がりを深め、平野郷を守護している。

融通念仏宗総本山の大念仏寺が平野郷の町衆の「横軸」のネットワークとするならば、坂上一族が建立した杭全神社こそが先祖代々から脈々と続く坂上七名家という「縦軸」のネットワークを形成しているといえよう。

この「横軸」と「縦軸」の微妙、絶妙なバランスが平野郷という大阪でも、いや、日本でも有数の自治都市を形作っている。

「まちづくりとは何か?」という問いは平野郷を探ることで答えの糸口が見つかる気がしてます。深い都市です。平野郷。


カテゴリー: 雑感 タグ: