西鶴『好色五人女』のおさんVS近松『大経師昔暦』のおさん

井原西鶴と近松門左衛門は、天和3年(1683)に起こった京の大経師意俊の妻おさんと手代の茂兵衛が密通して処刑されたという事件を題材に、それぞれ作品を創作しています。

西鶴は『好色五人女』(1686)の「中段に見る暦屋物語」で、近松は『大経師昔暦』(1715)ですが、同じ事件を扱っていながら、西鶴のおさんと近松のおさんとでは、まるで違った描かれ方をしています。つまり、近松はおさんを楽天的で情熱的な女性として描き、西鶴はおさんを倹約に励む働き者で、いかにも商家の妻という女性に描いてるんですな。

例えば、おさんが使用人の茂兵衛と不義になって駆け落ちするさいは、近松おさんは取るものも取らずに家を脱出する恋に生きる女性として描かれていますが、西鶴おさんは逃亡資金と今後の生活のために500両もの大金を持ち出してます。

当時、不義密通は極刑という時代です。近松おさんは既に死を覚悟した破滅的な逃亡者ですが、西鶴おさんはなんとか生き延びて男性と生活していくと考える、じつに逞しい女性なんですな。

西鶴のおさんか?近松のおさんか?さて、あなたは、どっち?(笑)


2010年 10月 8日
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