阿遅速雄神社のこと
2023 年 1 月 21 日
大阪難読地名で有名になりすぎて、もはや難読ではなくなった感もある放出(はなてん)の氏神さまが阿遅速雄神社(鶴見区)。
阿遅速雄(あぢはやを)というのがこれまた難読でややこしいが、大和の国津神系で鴨氏(賀茂氏)に繋がるとされている。また「阿遅」(あぢ)は「味」で「美味い」というような意味になり、農業神としての性格があるといわれている。
この辺りは古代は河内湾、河内湖のエリアで水辺でもあった。いまも第二寝屋川が付近を通る。この河内湖を舞台に繰り広げられたのが草薙剣盗難事件。
飛鳥時代の天智天皇7年(668)に新羅の僧侶・道行が熱田神宮からご神宝の草薙剣を盗み、船で逃亡しようとした。ところが河内湖の辺りで嵐に逢い、船が進まなくなった。道行は神罰だと恐ろしくなり、草薙剣を「放出」した。剣は里人に拾われて阿遅速雄神社に納められたが、その後、熱田神宮に無事に戻されたという。
放出(はなてん)は「はなってん」という大阪弁が訛った地名というわけだが、何を放ったか?まではあまり知られてなかったりする。まさか天皇家のシンボル、三種の神器の草薙剣とは思わない。僕も大阪あそ歩のまち歩きコース作成で現地をリサーチしたさいは「ほんまかいな?」と疑った。
しかし今も毎年、阿遅速雄神社例祭には熱田神宮の神職がわざわざご挨拶に来るそうで…どうもそれなりに信憑性のある話らしい。事実は小説より奇なり。
なによりも謎なのが新羅の僧侶・道行の行動で。なぜ?新羅の僧侶が草薙剣を盗もうと思ったのか?道行の狙いとは何であったのか?古代日本のミステリーのひとつ。
カテゴリー: 雑感