イギリスは早いですな。
【英、4年で公務員49万人削減へ…全体の8%】
英国のオズボーン財務相は20日、財政赤字の削減を目指して、2011~14年度に公務員を約49万人(全体の約8%相当)減らすことなどを盛り込んだ財政に関する報告書「歳出再評価」を議会で発表した。6月に公表した財政再建策のうち、歳出削減の詳細を明らかにしたもので、戦後最大規模の歳出カットとなる。
再建策は無駄な支出見直しを柱に据えた。公務員給与の引き上げを2年間凍結し、人員削減も含め、中央省庁の行政経費を4年間で約3分の1、計59億ポンド(約7600億円)を減らす。福祉関連では、13年1月から高額所得者向けの子ども手当を廃止し、年25億ポンドを浮かせる。発表に先立ち、19日にはキャメロン首相が、国防費を14年度までに8%減らすことも表明した。
(2010年10月21日00時35分 読売新聞)
9世紀、空海は留学生として入唐して密教の経典を入手、それをごっそりと日本にもってきました。
密教はルーツを辿ればバラモン教で、仏教以前のインド土俗の宗教です。バラモン教には釈迦は登場しません。「宇宙とはいかなるものであるか?」という生命の根源的なものを問う宗教で、「曼荼羅(マンダラ)」(元はバラモン教のもので、ようわからん幾何学模様でしたが、仏教に取り入れられると、仏などが描かれるようになりました)というのは、そのシンボリックであり、図案化だそうです。
宗教は先発のものは素朴で大雑把で大袈裟でテキトーで、後発はそのアンチテーゼとして登場するので、理論武装してロジックが優先します。バラモン教も仏教、儒教よりもスケールは大きかったようですが、それだけ整合性はなく、カオスで、破綻していました。
そんなバラモン教が中国に渡ったときも、中国人は、まったく興味を覚えなかったようです。中国人は良くも悪くも現世的で合理主義者ですから、目に見える山川草木花鳥風月はこよなく愛しますが、「宇宙」なんてものを説く宗教には大して感心をもたなかった。体質に合わなかったんでしょう。一部の好事家が、趣味的に「これはなかなか面白い」なんて手慰みにしていただけで、空海の時代には完全に廃れていました。
ところが、そのバラモン教を唐で発見した空海は「これはすごい!」とひとりで大興奮して、本当であれば20年間の唐留学の予定だったのを、わずか2年で切り上げて、日本に持ち帰りました。空海の天才はここからで、空海はバラモン教を勉強しながら、その聡明すぎる頭脳で、見事に自分流に再構築して、完全完璧な宗教「真言密教」として完成させました。空海の真言密教には、一切、破綻がなく、隙間がありません。大雑把なバラモン教を圧縮、凝縮して、宝石のような結晶体(=真言密教)にしてしまった。宇宙を説くマクロのバラモン教から、一輪の蓮花のようなミクロの真言密教へ・・・それが空海の仕事でした。
また、空海は真言密教を、日本全国の庶民に齎らそうなんてことはしませんでした。宗教は分布しようと思うと、信者を獲得していこうとすると、どんどんと方便(ウソ)が必要になっていき、教義もダラダラしたものになっていきます。親鸞上人は「結婚しても魚食べても悪人でもOKでっせ!」なんてことをいってそれが庶民の教化に繋がりましたが、空海はそういうスタイルは取りませんでした。ある種の純粋さ(親鸞上人の場合はまた別の純粋さ・・・激しさ厳しさがあります)にこだわったんでしょう。
その代わりに空海は、紀州の山奥にある、蓮の花が開いたような山上盆地に、自分の理想の、見事な壇上伽藍を作り上げました。高度1000メートル以上の雲の上に、空中浮遊の、天空に漂うような、宗教都市「高野山」を作り上げた。じっさいに高野山は、比叡山焼き討ちのように権力者に焼かれたことがなく(秀吉は焼き討ちしようとしましたが木食応其上人との話し合いで簡単に決着しました)、米軍の空襲にも遭いませんでした。どこか世界から超越した、隔絶した宗教です。
また真言密教は、選ばれた者だけの、天才の宗教ともいえます。普通の庶民には真言密教はわかりません(笑)しかし「小規模でもいいから、完全無欠の世界を作り上げよう」という空海のベクトルは日本人的だと思っています。利休の茶室や、龍安寺の枯山水にも通じる、日本的なベクトル。
キリスト教にしろ、イスラム教にしろ、大抵の世界の宗教は、マクロに拡大していきます。それがゆえに衝突する。しかし、空海の真言密教はミクロに展開していった。こういうベクトルの宗教があることは、世界にとって、救いになりうると思ってます。
もっともっと、世界に知られてほしい。空海のベクトル。
井原西鶴と近松門左衛門は、天和3年(1683)に起こった京の大経師意俊の妻おさんと手代の茂兵衛が密通して処刑されたという事件を題材に、それぞれ作品を創作しています。
西鶴は『好色五人女』(1686)の「中段に見る暦屋物語」で、近松は『大経師昔暦』(1715)ですが、同じ事件を扱っていながら、西鶴のおさんと近松のおさんとでは、まるで違った描かれ方をしています。つまり、近松はおさんを楽天的で情熱的な女性として描き、西鶴はおさんを倹約に励む働き者で、いかにも商家の妻という女性に描いてるんですな。
例えば、おさんが使用人の茂兵衛と不義になって駆け落ちするさいは、近松おさんは取るものも取らずに家を脱出する恋に生きる女性として描かれていますが、西鶴おさんは逃亡資金と今後の生活のために500両もの大金を持ち出してます。
当時、不義密通は極刑という時代です。近松おさんは既に死を覚悟した破滅的な逃亡者ですが、西鶴おさんはなんとか生き延びて男性と生活していくと考える、じつに逞しい女性なんですな。
西鶴のおさんか?近松のおさんか?さて、あなたは、どっち?(笑)
西成・花園町にて。「たこ焼き」で「たこなし」を注文するとは・・・。
西鶴は鎗屋町で生まれて
錫屋町で亡くなりました。
墓は誓願寺。
つまり大坂三郷やのうて
船場、島ノ内、天満やのうて
「上町者」でした。
上町から眺めると、大坂三郷のことがよう見えます。
高台に登りて見ればいろはにほ。
出自が人間の肝要を示す。
西鶴の文学は、まさしく上町文学や思いますな。
『銀壱匁の講中』より
人の分限になる事、仕合せといふは言葉、まことは面々の智恵才覚を以てかせぎ出し、其家栄ゆる事ぞかし。これ福の神のゑびす殿のまゝにもならぬ事也。大黒講をむすび、当地の手前よろしき者共集り、諸国の大名衆への御用銀の借入の内談を、酒宴遊興よりは増したる世の尉みとおもひ定めて、寄合座敷も色ちかき所をさつて、生玉、下寺町の客庵を借りて、毎月身体譣議にくれて、命の入日かたぶく老体ども、後世の事はわすれて、ただ利銀のかさなり、富貴になる事を楽しみける。
『闇の夜のわる口』より
大坂生玉のまつり、9月9日に定め置かれ幸はひ、家々に膾、焼ものもする日なり。我人の祝儀なれば、客人とてもあらず、年々に、こと徳つもりて、大分の事ぞかし。氏子の耗をかんがへ、神も、胸算用にて、かくはあそばし置かれし。
人の世は変わりませんな。西鶴は恐ろしい。
江戸時代、千日前は死刑場でした。江戸でいえば小塚原のようなとこで、磔柱が立ち並んで、獄門台には見せしめのために罪人の首が並びました。焼き場の煙は絶えず、昼でも人が通るとこやなかったそうで、大体、明治初期まで、そういう光景が続きました。
千日前から少し北に向かうと、所変わって道頓堀。ここは江戸時代は「道頓堀五座」というて、芝居小屋が並んでいました。船場の旦那衆が芸妓を連れて、道頓堀川戎橋を渡って、近松の浄瑠璃や藤十郎の歌舞伎を楽しみにやってきた。一番、大きな芝居小屋が角座で、この角座の楽屋からは獄門台のさらし首が見えたそうです。
大坂の芝居は、世話物で和事です。江戸芝居のような英雄悪漢傾城傾国が大活劇を繰り広げる!という荒事はしまへん。主人公は何の変哲もない一庶民で、金と色と欲と義理と人情の板ばさみ。犯してはならぬ罪咎に悩み、苦しみ、傷つけられ、最後は天網恢恢疎にして洩らさずの過酷な運命の裁きで、千日前の獄門台へと涙涙に送られていく。
大坂庶民は、道頓堀角座で、罪人たちのドラマに涙しました。その裏には、実際に千日前の獄門台が控えていて、芝居の主人公たち=哀れな罪人たちの末期が、リアルに、そこにあったんですな。ある意味、千日前刑場は最高の舞台演出であり、また裏を返せば、道頓堀の芝居は千日前の罪人たちに対する鎮魂歌であり、レクイエムだったわけです。
芝居なのか。真実なのか。わからない。虚実の皮膜こそが、もっとも面白い。芝居小屋と刑場。道頓堀と千日前というまちは、両隣りにあり、そういう関係です。大阪ミナミは、だから、恐ろしく、哀しく、美しい。
鳥居の原型のようなものは弥生時代の集落にもあります。それは渡り鳥の休み場所でした。渡り鳥がやってくることで、その集落に春や秋の、季節の到来が判明した。春は種を巻き、秋は稲を刈る。その合図が鳥居に集う渡り鳥。集落民たちは早く渡り鳥がやってくるようにと深く祈ったことでしょう。それが神社というサンクチュアリへと繋がっていく。
画像は坐摩神社の珍しい三鳥居。坐摩さんの神格の高さですな。
江戸時代の大坂。シビアな弱肉強食の町人世界を生き抜くには、才覚が頼りでした。では仮に豪商の家で、あまり出来のよくない、無能の跡取りがでた場合、どうするか?
答えは、売物に出ている侍株を買って、「禄取り」に仕立て上げる。侍はなにもしないでも給金がでます。それで生活を安定させて、跡取りを厄介払いにして、有能な次男坊や番頭、手代に店を継がせたといいます。
侍の中には生活に困窮したものは、その身分を売るものがいたわけですが、それを利用して事態を丸く収め、競争主義の町人世界を生き抜こうとした。これも大坂商人たちの知恵です。