大阪あそ歩のおもしろさ
大阪あそ歩のおもしろさのひとつは「まちの多様性」にある。まず大阪はまちの歴史が長い。日本最初の大寺・四天王寺(593)は現存し、難波宮(645年)といった遺跡も見つかっている。難波宮は平城京(710年)や平安京(794年)よりも古く、大阪が京都や奈良を凌駕する1500年近い歴史を有する歴史都市であることは意外にも知られていない。
歴史は長いのに京都の天皇や江戸の将軍といった権威・権力が長く根付かなかったことも、大阪のまちをおもしろいものにしている。まちの主役は自由闊達な町衆で、自分たちの好きなように、市場や花街、芝居町、夜見世といった商いと遊興のまちをデザインしていった。このまちの歴史や多彩さを反映したものが大阪あそ歩の「150コース」という驚異的なまち歩きのコース数だろう。日本の都市の中で、これほどのまち歩きを成立しうる都市はそう多くはない。まちには無数の物語やドラマが錯綜し、まるで万華鏡のように、訪れる人を魅了する。
もうひとつ、大阪あそ歩のおもしろさとして挙げたいのが「ひとの優しさ、暖かさ」だ。大阪は公家や武家といった官吏が作ったまちではなく、町衆が作り上げたまちで「わがまち」意識が非常に高い。大阪あそ歩のガイドはその町衆の遺伝子を受け継いでいるが、まちの人々・・・商店主や名物おばちゃんなども、わがまちを誇りに思い、愛している。それゆえにまち歩きの参加者を、まち全体で喜んで歓待してくれる。普段は決して見られないような仕事の現場を開放したり、とっておきの物語やエピソードを聞かせてくれる。自然と参加者がまちのファンになって、何度も何度もまちを再訪する・・・といったことも、まるで珍しくない。
いま日本の主要都市は経済効率を最優先して、高速道路やコンビニやファミレスやファーストフードなどで均一化、非人間化していく一方だが、大阪のまちは、まだまだ多種多様なまちがあり、ヒューマニズムを濃厚に残している。大阪あそ歩に参加するおもしろさ、醍醐味は、こうした「まちの多様性」と「ひとの優しさ、暖かさ」にふれることに他ならない。