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ウクライナ(遊牧文明とチェルノブイリと)

2014 年 3 月 4 日

人類の文明の中で最も優れた発展形態の文明が遊牧文明。放牧は土地ありきの発想。牧草地があって、そこに馬や羊や山羊などを飼います。遊牧は違います。馬や羊を主体にして、彼らに合わせて人間が生活する。モンゴルなどでは馬が草を求めて、どこにいくかわからない。それに併せて移動していく。人間が馬の集団を引き連れるのではなく、馬の集団の中に人間が紛れ込んで、それで生活していく。馬と一緒に移動する生活だから、土地の所有という概念がありません。移動式住居(ゲル。中国式ではパオ)であるし、自然を汚すということがない。馬にまかせて草原にやってきて、馬にまかせて草原から去っていく。彼らが立ち去ったあとは、どこにも人がいたような痕跡がないそうで、そうやって中央アジア、ユーラシアを逍遙し続けた。

農耕文明も牧畜文明も科学文明も、基本、自然環境を人為的に破壊します。唯一、破壊しない文明が遊牧文明で。遊牧文明こそは、最も自然と寄り添う、人類の叡智に満ちた究極のエコロジカル文明といえます。その発祥は中央アジア高原のスキタイ民族(紀元前5世紀頃。歴史家ヘロドトスが「馬と一緒に生活している人間たちがいる」と驚きの眼で遊牧民族たちを記述している)とモンゴル高原の匈奴(こちらは前漢の歴史家・司馬遷が記録している)なんですが、その2つの遊牧民族のうち、スキタイ民族の本拠地こそが黒海北部・・・つまり現在のウクライナ。

ウクライナは人類史上最高の遊牧文明を産みながら、しかし長きに渡る権力闘争や民族紛争の結果、旧ソ連領土となり、共産主義、国家科学主義の果てに20世紀後半にはチェルノブイリ原発事故を引き起こし、まさに悲劇の地となりました。人類とはなにか?その素晴らしさと愚かさが並立している国家といえます。そこがいま旧ソ連を引き継ぐロシアの介入によって、戦火となろうとしている。もうちょっと、なんとか、ならんもんやろか?ウクライナは遊牧文明を産んだ人類以上でも輝かしい栄光の民のはず・・・遊牧に、中央アジアに、スキタイ民族に憧れる、極東の列島の民は呟く。



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