大阪まち歩き大学。森ノ宮。なにわレース鳩センターさん。
大阪まち歩き大学。森ノ宮。なにわレース鳩センターさん。
ハト(河原鳩、土鳩)の帰巣本能というのは凄い。その性質を利用して生まれたのが伝書鳩。古代エジプトでも伝書鳩の記録があるそうなので、なんと5000年前からハトは伝書鳩として家畜化されていたことになる。
日本では江戸時代、大坂の堂島米市場の商人たちが伝書鳩を使っていた。日本全国各地の天気や天災、政変、事件などの情報を入手し、それを元に米相場で帳簿米(米の権利)売ったり買ったりを繰り返した。「情報こそが金になる」という金融資本主義の起こりといえる。
近代に入ってからは朝日新聞が他社よりも先んじてスクープを出すために伝書鳩を使ったという。まだ当時は電信や電報、電話といった通信網が日本全国各地になかった。だから事件の現場から伝書鳩を飛ばす方が早い。
その後、帝國陸軍など軍部も伝書鳩を研究して戦争の状況、最前線の様子を知らせるのに伝書鳩の有効性が認められ、実際に使われるようになった。「軍鳩」といわれて太平洋戦争でもいろいろと活躍している。近代戦争というのは総力戦。使えるものはなんでも使う。軍鳩、軍馬、軍犬と人間以外の動物も戦場に駆り出された。
戦後は一転、平和の象徴として鳩が使われ出し、特に1964年の東京オリンピックで聖火台に火が灯されると同時に大量の鳩が一斉に放たれる…という有名な開会式セレモニーで鳩飼育ブームがやってきた。
若者たちが鳩を飼い、育て、伝書鳩レースに自慢のマイ鳩(?)を出して熱い戦いを繰り広げたという。今でも伝書鳩レースに熱い情熱を注いでいる愛好家の方は少なくない。『愛鳩の友』という雑誌も出ている。読むと熱い。パッションが迸っている。
なにわレース鳩センターさんは、今も活動しておられるのがどうかはわからないが(ずっと昔から何度かまち歩きでご紹介しているが人がいるのを見たことがない。ひっそりしている)、屋上に鳩小屋らしきものが見える。いっぺん話を伺ってみたいものだが…。
ちなみに最近の伝書鳩レースは大変だという。伝書鳩の帰巣本能が狂っていてレースをしても帰ってこない。迷子になったりしてレースが成立しない。全滅したりしている。なぜか?世界中、どこでもケータイやら通信やらの電磁波が飛び交っている。それが伝書鳩を狂わせているという説があるが、よくわからない。
迷子になった伝書鳩は郵パックで送られてくるとか。佐川急便とかクロネコヤマトはペットの輸送ができないので郵パックのみ。伝書鳩を始める方は、ご注意を。