日本最大の食の祭典 09’食博覧会・大阪
本吉兆「絵ノ具皿八寸」
南港インテックスで開催された「日本最大の食の祭典 09’食博覧会・大阪」。ぼくは行けませんでしたが、行った人の話では盛況やったそうです。この大不況でも「食」は強いでんなぁ。
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大阪はグルメ大国のフランスや中国に匹敵するほどバリエーション豊かな食文化を誇ります。懐石料理。割烹料理。うどんすき。てっちり。しゃぶしゃぶ。箱寿司。紙なべ。ハリハリ鍋。きつねうどん。たこ焼き。お好み焼。串カツ。ドテ焼き。国産ワイン。インスタントラーメン。レトルトカレー。屋上ビアガーデン。回転寿司・・・数え上げるとキリがないんですが、これらは全部、大阪発祥のグルメです。
そもそも日本料理というと「京料理」というイメージがありますが、これは間違いです。というのも京都(平安京)は山奥に位置していて海がないので魚を生食することが非常に難しかったんですな。京都古来の料理というのは、乾き物などを合わせた「煮る食文化」に留まっています。これは古都・奈良も同じです。また江戸は港町で魚が豊富なのですが、17世紀以降に出来た新興都市であり、畿内半島から遠く離れていることもあって煮る食文化が伝播せずに、刺身や江戸前寿司に代表されるような「割く食文化」を形成しました。
対して大阪は京都の煮る食文化の影響を受けながら、港町であるという絶好のロケーションにあったので「煮る食文化」+「割く食文化」を見事に融合させて「割烹」という新ジャンルを確立させました。「割烹」という漢字の「割」は割くこと、「烹」は煮ることを意味していて、要するに日本料理というのは、「割烹」のことであり、大阪料理のことなんですわ。こういうのを大阪弁で「ええとこどり」といいます(笑)
日本料理の一大ジャンルの懐石料理も、茶聖・千利休の茶懐石から派生したものです。千利休も京都人と誤解されているようですが、大阪・堺生まれで紛れもなく大阪人(堺人)です。利休の懐石は当初は「一汁三菜」という質素な形体から始まりましたが、やがて四季折々の自然や風流を入れ込むという粋な食文化へと発展していきました。舌だけで料理を味わうのではなく、器や杯、掛け軸、普請、庭などと一体化させて、味覚、触覚、視覚、聴覚、嗅覚と五感を駆使して食を楽しむ。これほど「贅沢極まりない食文化」というのは日本はおろか世界を探しても希で、だからでこそ住友や鴻池、加島屋といった名だたる大坂豪商たちが深く愛したわけです。この流れを汲むのが船場・高麗橋にある「本吉兆」で、過去3度の東京サミット(先進諸国首脳会議)では晩餐を勤めて、世界の首脳陣から大絶賛されました。
http://www.kitcho.com/osaka-hon/
http://mutsu-satoshi.com/2008/11/14/
こうした高級料理を生んで、それを継承しつつも、また一方ではインスタントラーメンやレトルトカレー、回転寿司といった大衆的な食文化を生み出したのも大阪料理の偉大なる功績です。インスタントラーメンの消費量は全世界で年間900億食を超え、回転寿司は「ローリング・スシ」と呼ばれてNYやロンドンでも大行列とか。大阪料理がいまや「世界料理」になっているわけで、これは大阪発信の文化大革命といえます。
食文化というのは一朝一夕に形成されるものではなくて、先人達の知恵と技術の積み重ねによって完成するもの。本吉兆やインスタントラーメンの快進撃は大阪が世界有数の文化都市であることの証明といえます。