ホーム > 雑感 > ■現在に蘇る「大阪七墓巡り復活プロジェクト」

■現在に蘇る「大阪七墓巡り復活プロジェクト」

2015 年 1 月 11 日

大阪七墓巡り復活プロジェクトの原稿を書いてくれといわれたので、原稿を書きました。1800文字。

———————————————————————–

■現在に蘇る「大阪七墓巡り復活プロジェクト」
大阪七墓巡り復活プロジェクト実行委員会 代表 陸奥 賢

「大阪七墓巡り」は江戸時代にあったという大阪の町衆の祭礼です。毎年、盆の頃になると市中郊外の七墓(梅田、南濱、葭原、蒲生、小橋、千日、鳶田など。文献によって墓が変わります。いろんな巡り方があったようですな)を巡り、「無縁仏」を供養したとか。いつはじまったか?は不明ですが、近松門左衛門が『賀古教信七墓廻』という戯曲を書いていて、その中に七墓巡りが登場しています。この戯曲は元禄15年(1702)の作品ですから、その頃には、すでにある程度は、大阪庶民に広く知れ渡っていた風習なんやないか?と思われます。
 
面白いのが将軍・吉宗が亡くなった頃に、喪に服すために歌舞音曲の類が禁じられるんですが、七墓巡りの連中は「うちらは無縁仏の供養のためやからええやないか」といった陳情書があるそうで、これがゆえに七墓巡りは歌舞音曲とともにやっていたということがわかります。また「七墓巡りをやります」というと夜通し、大阪のまちを徘徊できるので、中には酒を飲んで酔っぱらって寺で暴れるような輩もいたようで、苦言を弄している古文献などもあります。昭和の文献ですが『郷土研究 上方』の「大阪探墓号」(第56号)には、七墓巡りの錦絵(当時すでに七墓巡りは廃れていたので、これは想像図なんですが)が収録されていて、これを見ると鉦を持った連中が、夜の大阪のまちを歩いていますが、なんだか陽気で、みんな表情が明るい。供養の巡礼で宗教行為ですが、アートや芸能、エンターテイメント、観光的な要素がごちゃ混ぜになっている。庶民的で、エネルギッシュで、カオスモスで、じつに大阪的な祭礼といえます。ただ残念なことに明治以降は墓地の消滅やら、近代都市化によって七墓巡りはなくなってしまいました。大阪七墓巡り復活プロジェクトは、この失われた大阪の祭礼を現代風に復活させたらおもろいんちゃうか・・・?ということで、観光家/コモンズ・デザイナー/社会実験者の陸奥賢が中心となって、2011年から活動をはじめたプロジェクトです。

戦後の高度経済成長期のイケイケ押せ押せの時代は終わって、いまは少子高齢化の時代です。2050年には日本の人口は1億人を割り、3000万人以上も人が減るとか。当然、日本は経済的に没落していくし、限界集落は消滅し、都市の空洞化も進むことでしょう。子供、跡継ぎがいませんからムラとか地域社会とか会社とかコミュニティといったものは淘汰され、崩壊していく。時代は閉塞していき、若者は孤独感を抱え、ひきこもりやらネット依存にはまり、老人もどんどん孤独死していく。要するに「無縁社会」に突入していくわけですが、こうした無縁がスタンダードとなる時代には、だからでこそ「無縁者が集まれる祭礼」が必要なんやないか?というのが七墓巡りを復活させる現代的意義といえます。

基本的に祭礼というのは、コミュニティに所属しないと参加できません。岸和田だんじり祭は岸和田の町内の人間だから曳行に参加できるわけです(最近はヘルプも多いようですが…)。ところが大阪七墓巡りは無縁仏を供養する祭礼ですから、だれでも参加できるという稀有な祭礼です。また、死んでしまった無縁者を供養しようと、生きている無縁者たちが集まるわけですが、七墓(毎年、徒歩で巡ってます。約30キロで10時間ほどかかります)を巡っている最中に会話をはじめ、結果として有縁の関係性が産まれてきます。珍奇な祭礼なので若い男女の参加も多いんですが、じつは七墓巡りをキッカケに付き合い始めたというカップルが何組もいます。なんと無縁仏が恋のキューピッドになってしまった(笑)無縁仏も喜んでいるんやないか?と思います(もしくは嫉妬してるかも知れませんが)。

思えば「無縁仏」という存在は、すでに死んでいる人間なので絶対に会うことはありません。自分とは何の縁も関係性もない存在であり、「他者中の他者」です。この無縁仏という「究極の他者」「絶対の無縁」に比べたら、いま生きている人たちとは話もできれば、ふれあうこともできる。「無縁社会なんていうが、無縁仏に比べたら、そんな大した無縁ではない」と思えたら、少しは、この無縁社会の生きづらさを解消できるかもしれません。

今年も8月15日(終戦記念日)に大阪七墓巡りを実施予定です。詳細はfacebookページをご覧ください。

■大阪七墓巡り復活プロジェクト公式ページ
https://www.facebook.com/osaka7haka


カテゴリー: 雑感 タグ: