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大阪料理とは何か?~割烹、懐石、出汁(だし)文化~

2011 年 5 月 11 日

新しくなった大阪駅(大阪ステーションシティ)に大阪が誇る大阪料理の名店「高麗橋吉兆」が入っててちょっと驚きました。「高麗橋吉兆 JR大阪三越伊勢丹店」とか。店名がやたらと長い・・・。
http://osakastationcity.com/restaurant/438.php
http://www.kitcho.com/osaka-hon/eat_open/index.html

日本料理というと「京料理」のイメージがありますが、京都(平安京)は「山背」というように山奥に位置していて海がないので魚を生食することが非常に難しい。京都古来の料理というのは乾き物などを合わせた「煮る食文化」に留まっています。これは古都・奈良も同じくです。また江戸は港町で魚が豊富ですが17世紀以降に出来た新興都市であり、畿内半島から遠く離れていることもあって「煮る食文化」が伝播せずに刺身や江戸前寿司に代表されるような「割く食文化」を形成しました。対して大阪は京都の煮る食文化の影響を受けながら、港町であるという絶好のロケーションにあったので「煮る食文化」+「割く食文化」を見事に融合させて「割烹」という新ジャンルを確立させました。「割烹」という漢字の「割」は割くこと、「烹」は煮ることを意味していて、要するに日本料理というのは「割烹」のことであり、大阪料理のことです。こういうのを大阪弁で「ええとこどり」といいます。

日本料理の一大ジャンルの懐石料理も、茶聖・千利休の茶懐石から派生したものです。千利休も大阪・堺生まれで紛れもなく大阪人(堺人)。利休の懐石は当初は「一汁三菜」という質素な形体から始まりましたが、やがて四季折々の自然や風流を入れ込むという粋な食文化へと発展していきました。舌だけで料理を味わうのではなく、器や杯、掛け軸、普請、庭などと一体化させて、味覚、触覚、視覚、聴覚、嗅覚と五感を駆使して食を楽しむ。これほど「贅沢極まりない食文化」というのは日本はおろか世界を探しても稀で、だからでこそ住友や鴻池、加島屋といった名だたる大坂豪商たちが深く懐石料理を愛したわけです。また江戸時代の大阪は「天下の台所」として諸国の特産物の流通センターでした。北国の北海道の昆布と、南国土佐の鰹を掛け合わせて「だし」を取ることを発明したのは大阪の町衆です。これは画期的な発明で、昆布というのは「植物性アミノ酸」、鰹というのは「動物性アミノ酸」で、これを掛け合わせると、なんと「旨み成分」(アミノ酸=味の基です。笑)が約7倍になるんですな。

いま日本料理というと、昆布+カツオの「だし」が基本ベースになってますが、これは、大阪人の発明。「大阪料理とはなにか?」というと、この「だし」の文化で、これはしかし、もはや「日本料理のスタンダード」になってしまっているので、誰も「大阪名物」といわない。しかし、ほんまは、この「だし」こそが「大阪名物」なんです。東京は「ミシュランガイドで世界最高数の星をとった!東京はパリを抜いて世界最大の食の都だ!」なんてことをいってますが、それは大阪の「だし文化」があってこそ、です。日本料理店から昆布とカツオの「だし」を抜いたら、一体、どういうことになるか。考えてみてください。大阪の町衆が発明した「だし文化」こそが、世界最大の食の発明でした。大阪人は、もっと、自分たちの先達が産み出した偉大な食文化を誇りにして宣伝しましょう(笑)


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